手術治療のリスク
Q顔面けいれんや三叉神経痛の手術治療で、どんなリスクがありますか?また、それはどれくらいの確率で起こりますか?
私が鍵穴手術による微小血管転置移動術(MVT手術)を確立してから30年余り、普通の生活に戻れないような重篤な合併症を起こしたケースは一例もありません。ただ、患者さんにはお年寄りの方が多いので、耳が聞こえにくくなるとか、神経の絡みつきがひどくて、ちょっとしためまいやふらつきが残るというマイナーリスクが、1%ほどあります。医師を選ぶ際は、担当医に、「今までに手掛けたその手術の症例数」と、「合併症などのリスク」を必ず確認し、安心して任せられる医師を選ぶことが大事です。名医は必ずいます。あなたの命を預けるのですから、どうか妥協せず、納得のいく病院、安心して任せられる医師のもとで手術を受けてください。
Q三叉神経痛の痛みを薬で抑えていますが、このまま薬を続けても大丈夫でしょうか。開頭手術には不安があります。
痛みが薬でコントロールできるのであれば、しばらくお薬を続けても問題はありません。ただ服薬による痛みの緩和はあくまで対症療法であり、三叉神経痛が自然治癒することはありませんから、私は鍵穴手術によるMVT手術で一発完治されることをおすすめします。無剃毛で3センチ程度の皮膚切開、開頭は1~2センチ、2時間程度の手術で完治できます。
再手術はできますか?
Q三叉神経痛の手術を受けたのですが、痛みが治まりません。再手術をすれば治りますか?
前回受けた手術のレポートや、手術についての説明を受けたときのメモなどがあれば、持参して受診してください。術前・術後のMRIなどの画像をお持ちいただけるのであればなおいいのですが、現実には難しいかもしれませんね。三叉神経痛や顔面けいれんの痛みが治まらない原因は、本書で何度もご説明しているとおり、血管と神経の間にはさんだスポンジ状の異物が、神経を圧迫してしまうために痛みが再発するケースがほとんどです。再手術では、それらのスポンジ状の異物を丁寧に剝離して摘出し、たわんだ血管をマイクロテフロンテープで巻いて移動させる手術を行います。患部の状態にもよりますが、スポンジが神経と癒着を起こしているような場合、手術時間がやや長くなります。
予防法、早期発見するためには
Q三叉神経痛や顔面けいれんを防ぐ方法はありますか?
これらの病気の原因は血管ループによる神経根の圧迫です。予防する方法は今のところありません。ただ、脳の動脈が動脈硬化でたわんで脳神経を圧迫することから起こる病気であることはわかっています。動脈硬化の危険因子としては、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、喫煙、運動不足、偏った栄養バランスの食事、アルコール、加齢、ストレスの有無などが考えられますので、食事をはじめとする日常生活を改善することで、健康的な生活を心がけることぐらいでしょうか。いずれにしても安全確実な治療法が確立されていますので、気になる症状があるときはMVT専門の脳神経外科医のところで、早めに診察を受けるようにしてください。
Q術後、注意することはありますか?
普通の手術の場合、4、5日で退院。遅くとも2週間程度で手術前の生活に戻れます。術後のフォローアップとしては、1年ごとにCTやMRIをとりますが、もし心配なことがある場合は、いつでも遠慮なく受診してください。何も異常がなければ3年程度のフォローアップで終了です。
Q親が三叉神経痛にかかり、手術を受けました。私も同じ病気にかかる可能性がありますか?
この病気は遺伝するわけではないので安心してください。脳の病気のうち、神経線維腫症や脳動脈瘤の一部で遺伝傾向が証明されています。脳動脈瘤はMR血管撮影という30分程度の検査で何の苦痛もなく寝ているだけで簡単に調べることができますから、心配な方は一度脳ドックを受けるようおすすめします。通常脳ドックは全額自己負担となりますが、5万円ほどです。欧米で脳ドックと同じ検診を受けると50万円かかります。日本は世界一医療費が安いので、毎年1回脳ドックを受けましょう。
脳ドックを受けるには
Q脳ドックは、どういうタイミングで受けるといいですか?
脳ドックでは、脳腫瘍や水頭症、脳梗塞や脳の委縮、脳動脈の状態をすべてチェックできます。MRIやMRA、マルチスライスCTなどの画像検査のほか、血液検査、尿検査、心電図、頸部超音波などが行われます。苦痛はほとんどありませんので、安心して受けることができます。脳の病気は早期発見、早期治療が大切です。脳動脈瘤が破裂してクモ膜下出血になる前に発見できたら、脳腫瘍が5ミリ以下の段階で発見できたら、治療はぐっと容易になります。
どんなに偉い人、大臣でもプロ野球の監督でも、1回の脳の病気で倒れてしまうのです。名誉、地位、お金、愛情、家庭、人生には手に入れたいものがたくさんありますが、一番大事なのは健康です。病気になると健康のありがたみがよくわかります。赤ちゃんから高齢者まで国民全員、脳ドックを受けて、早期発見、早期治療で全治し健康で長生きしましょう。日本は世界一検査費が安いのです。米国ではCT検査が1回20万円、MRIは50万円かかります(日本は1万円)。初回の検査で特に異常がなければ、年1回か2年に1回程度の頻度で脳ドックを受けると安心です。
世界一の医療水準を誇るアメリカの医療関係者から「神の手を持つ男」(The Last Hope)と称賛される脳外科医Dr.福島孝徳は、今年2018年で医師生活50年を迎えた。現在でもアメリカ、ヨーロッパ、北欧、南米、アジア、ロシア、エジプトなど世界20カ国以上を飛びまわり、高難度手術を年間600人以上行っている。
「絶対にあきらめない、成し遂げる」という強い不屈の心、闘いつづける力はどこから来るのか——。
世界一と称賛される奇跡の技法「鍵穴手術」について、また、患者さんからの感謝の声、愛弟子たちの秘話も満載。
「私のところには“Dr.福島でなければ治せない”という難しい腫瘍や巨大脳動脈瘤などの複雑な病気の患者さんが、最後の望みをもって来てくださいます。それが私にできる手術であるなら、どんな患者さんでも受け入れます。そして、いつも患者さんに言います。“私が手術するんだから、もう大丈夫”と」 (福島孝徳)
◎脳外科に人生を捧げた私のミッション
◎75歳の今でも、その日に行った手術の復讐は怠らない
◎なぜ私が世界や日本各地を飛びまわるのか
◎私の手術を見学したい若手医師を歓迎します
◎世界一の手術師が生んだ奇跡の技法「鍵穴手術」
◎1円玉大の穴をあけ、顕微鏡で手術する
◎鍵穴手術による治療「顔面けいれん」「三叉神経痛」
◎私の後を継ぐ「次世代の脳外科医たち」の声
◎日本で福島孝徳が手術を行う病院一覧