私の子供の頃は、戦後間もない、日本がとても貧しい時代でした。食べる物は、麦ごはんやすいとん、庭で育てた茄子、トマトなどしかなく、小学校での遊びといえば、メンコ、ベーゴマ、タコアゲ、カンケリなどでした。スポーツをする道具もなかったですし、書道を勉強するにも墨も筆もありませんでした。
そんな貧しい中、母は私に日本の伝統文化でもある“折り紙”を教えてくれました。一枚の紙さえあれば遊べる“折り紙”は、何もなかったその時代に、子供の私を楽しませようとした母の愛情だったのでしょう。一枚の紙から次々に生み出される様子はとても不思議で、すぐに折り紙に夢中になりました。基本的な形はもちろん、むずかしい折り紙にも挑戦し、オリジナルの折り紙までも創りだしました。
その後、大人になっても折り紙は続け、医師になってからは機会があるごとに折り紙を作り、患者さんにプレゼントしていました。そのおかげが、若い頃は「折り紙王子」、今では「折り紙大王」などと呼ばれています(笑)。
私の脳外科医として必要な細やかな手先の技術は、あのとき母が教えてくれた折り紙が基礎になっているのだと、ありがたく思います。
●作品紹介
2016年6月27日