こんな医師にあなたの命は救えるのか!?(2) ※神の手の提言ー日本医療に必要な改革 第1章 【書籍抜粋】

▼実力以上の手術を試そうとする教授たち

難しい脳腫瘍の手術、複雑な頭蓋底の手術をきちんと行うには、最先端のマイクロ技術と、たくさんの特殊な手術器具が必要です。しかし、きちんとそろえているところは、全国の大学・大病院の半分以下でしょう。いろいろな病院から招待手術を依頼されますが、ほとんどの施設が、数十年前の古い手術器具しかありません。最先端の超精密手術をするために、私はいつも3箱600本もの手術器具を自分で持ってまわっています。

本来ならば最高の道具、最高の設備、最高の技術と知識で、最高の手術を行わなくてはいけないのに、それができない医師が多すぎるのです。

もし、自分が適切な脳外科手術ができないのなら、できる医師に委ねるべきですが、日本の医師にはそれをしない人が多すぎます。自分には治せる見込みのない患者さんでも、自分のところに囲い込んでしまうのです。

無責任で悲惨な症例は、枚挙に遑がありません。しかも、手術を行っているのが大学の教授や准教授、そして大病院の部長、科長の先生がたです。こうした脳外科医が、絶対にしてはいけない手術をして、本当は助かる患者さんをみすみす寝たきり状態にしているのです。そんなことが許されるはずがありません。

私が日本に来ると必ず、どこかの大学病院や大病院での、不完全、不適切な手術に泣いている患者さんにたくさん出会います。どうしてこんな難しい手術を簡単にやろうとするのか、首をかしげてしまいます。自分ができない場合は、1回のきちんとした手術で全治できる、他のエキスパートを紹介すべきなのです。

腫瘍は手術で半分くらい取って、あとは放射線治療をすればいいという医師もいます。

しかし、そのような中途半端な治療で全治は望めません。患者さんがその方法を望んだのでない限り、それはおかしいと私は思います。放射線障害や再発で、人生は変わってしまいます。またあとで詳しく書きますが、放射線治療で、取れるはずの腫瘍をみすみす固くして癒着させる場合もあるのです。良性の脳腫瘍は、1回の適切な、正しい手術で取って全治させるべきなのです。

▼モラルの欠けている医師が多すぎる

脳外科の手術は、易しいレベル1のものから困難なレベル10のものまで、10段階あります。脳外科医で6~10年トレーニングして学会専門医の資格を持っていれば、レベル1~5、あるいはレベル6までは、本人の手術経験や症例数にもよりますが、手術を行ってもいい医師だと私は思います。

日本には脳血管障害である脳卒中の患者さんが多いということもあって、脳卒中、脳血管系の手術は上手な人が結構多いのです。おそらく、日本の脳外科医の脳血管手術の技術は、世界のトップレベルをいっていると思います。

しかし“脳腫瘍”については、レベル5~6以上の手術は、ほとんどの日本の脳外科医には難しいと思います。脳腫瘍の治療はみなさん経験が少なく、手術法が古すぎるのです。私が名前をあげられる脳腫瘍手術の名医は、日本全国8000人の脳外科医の中で数人、また現在の日本の脳神経外科学会で、私が脳腫瘍手術の専門医として評価できる教授は、正直申し上げて、80大学のなかで5人ぐらいです。残念ながら残りの方は脳外科の教授であっても、レベル7~10の難しい脳腫瘍の手術をするのにはふさわしくないと言わざるを得ません。

ところが、日本では、高難度の脳腫瘍の手術をすべきでない大学教授たちが、他の実力ある医師にまかせず自分で手術をしてしまいます。教授としてのメンツやなわばり意識にとらわれ、患者さんの囲い込みに必死で、かつリスクのある難しい手術を自分でやってみたいという誘惑に負けてしまうのです。しかし、試してみたいと思っても、実際にはしないのが医師としての最低限のモラルでしょう。そのモラルが欠けている医師が日本には多すぎるのです。みなさんには信じられないかもしれませんが、そのようなメンツだけにとらわれた教授、准教授、一般脳外科医が日本にはいるのです。

そんな医師が手術をするともちろん不十分に終わるか、合併症、後遺症を起こしますが、失敗したことなど患者さんの前ではおくびにも出しません。きっちり手術できなくても、ほかのエキスパートへ紹介もしない。不完全に手術して、また不完全な放射線治療を行う。そして再発し、また放射線を当てて、患者さんの脳を結局ダメにしてしまいます。

脳外科の患者さんの場合、手術を受けて元気に家へ帰れるか、寝たきりになってしまうかは紙一重です。そのことを、すべての脳外科医、そして患者さん自身にも理解してほしいのです。「あなたは、この患者が自分の身内だったら、こんな手術をしますか?」と、私はできもしない手術をしている脳外科医に問いたい気持ちでいっぱいです。

 

▼「福島孝徳の手術を見学に行ったら破門」

手術ができないなら、なぜ自分よりも技術のある医師のもとへ勉強に行かないのでしょう。またなぜできる医師を紹介したり、あるいは自分のところにエキスパートを招待したりして、きっちりした手術を学ばないのでしょうか。

私が日本で手術を行うと、全国から若手脳外科医が見学にやってきますが、多くの医師が異口同音に「今日、私が福島先生の手術を見学にきたことは言わないでください」と言って帰っていきます。なぜなら、脳外科医として優れた手術法を学びたいという当たり前の気持ちで見学に来ているのに、大学の医局の中には、「福島の手術を見に行った医局員は破門だ」という教授のお達しが出ているところがあるというのです。

なんと悲しいことでしょうか。勉強したいという純粋な若手医師たちの気持ちを、つまらないメンツのためにつぶそうとしているのです。

アメリカのデューク大学の私のもとには、手術を見学しようと、世界中から医師がやってきます。私のところはオープンで、どなたがいらしてもすべてお見せし、説明し、歓迎しています。若い先生方には何らかの援助をし、見学、研修のお客様は、すべて手厚くおもてなししています。ところが、アメリカやヨーロッパ、アジアの他国の教授、准教授は勉強にいらしても、日本の教授のみなさんはいらっしゃいません。

私は現在アメリカで、日本から呼んだ有望な若手医師を毎年数人ずつ、生活の面倒をみながら実地教育しています。しかし、私自身が若手医師を招待しても、留学を許可しない医局がたくさんあるのです。

私は若いうちから世界各地へ勉強に行って、自分で手術法を改革してきました。

私は外国でも日本でも、自分の持てる知識、技術、最先端のマイクロ器具を駆使して、まわりの医師たちにすべてを細かく説明しながら手術をしています。私は、私を必要としてくれるなら、日本のどんな病院にも行く意思があります。しかし、日本で私を呼んでくれる病院は、限定されています。


”すべては患者さんのために”をモットーに世界中で活躍し、日本でも”神の手”として数々のメディアに登場する脳外科医・福島氏が、日本医療の数々の問題点に鋭く斬り込む!

第1章 こんな医師にあなたの命は救えるのか!?
第2章 能力のない医師が増えていく日本のシステム
第3章 日本は先進国最低レベルの医療費国家だ!
第4章 日本の脳外科医に伝えたいこと
第5章 賢い患者が名医に出会える!
おわりに すべてを患者さんのために

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2025年4月30日