福島式手術のすべて
福島式鍵穴手術
福島式鍵穴手術とは、脳外科手術で必要な開頭の範囲を最小限にとどめ、患者様の身体的な負担とリスクをおさえる術式です。
「髄膜種」「聴神経腫瘍」「下垂体腫瘍」や、神経血管減圧術といわれる脳神経外科治療が必要な「三叉神経痛」「顔面けいれん」など、様々な疾患に対する手術法として、再発するリスクのない手術を行っています。この手術には高度な技術が必要ですが、福島孝徳最高顧問を中心に、福島式鍵穴手術を実践している専門医チームにより確実な手術治療を行っています。
福島式手術方法
福島式鍵穴手術は頭蓋底手術には欠かせない技術です。この技術が脳外科手術にいかに重要かをご説明いたします。
2つの図を示しました。
図の左は「従来の開頭」です。大きく開け腫瘍を取ります。
開頭範囲が広く、周囲の脳を十分に避けなくてはなりません。
図の右は「福島式鍵穴手術」です。小さく開け大きな術野を得て腫瘍を取ります。
手術をする際の開頭範囲を小さくする事で手術による患者の負担を減らし、手術中の出血を抑え、手術侵襲を少なくします。
鍵穴とは名前の通り従来よりも小さい開頭という意味もありますが、同時にその穴が最も重要な「鍵」となる穴。という意味も含まれています。これには開頭をする場所が重要になります。正確な解剖学的知識と術者の経験が最も重要になるのです。また近年のMRI、CT、ナビゲーションシステムなどの素晴らしい医療機器の発展から、手術前から正確な位置を把握できるシステムがこの精度を上げる事ができるようになりました。
鍵穴手術で手術の最も重要なポイントは、「 硬膜外の処理」です。硬膜とは骨の下にある膜ですが、この硬膜の外の骨を効率よく処理することで鍵穴手術が可能となるのです。
図1のような従来の開頭では、せっかくの開頭が全く有効に使われていません。図2のように硬膜外の骨を処理する事で小さい穴でも腫瘍を摘出する事が可能になるのです。更には図3にように更に大きな腫瘍も扱う事ができるようになります。特に頭蓋底腫瘍は通常深いところに腫瘍があり、深い術野に到達するには狭いトンネルを通って手術を行いますので、図4のようにこの鍵穴手術のテクニックが必要になってくるのです。
鍵穴手術の重要なポイント
*徹底した繊細な止血技術
*硬膜外処置方法
*脳血管の温存
*詳細な頭蓋底解剖知識
*的確なsharp dissection
*繊細なmicro technique
*脳のretractionを最小限に抑える
もちろんこの小さな開頭だけで全ての手術が可能という訳ではありません。腫瘍のサイズ、腫瘍の場所、腫瘍の性質、手術の目的、患者様の状態など様々な要素を考慮した上で手術の方法、術式を決めます。我々は、これらのコンセプトのもとで各症例において最良最善の方法を用いて治療を行っております。
手術に使用する各種ツールをメーカーと共同開発
福島孝徳は脳外科医であると同時に、エンジニアとしても高い見識を持つドクターです。福島の手によって今も医療機器の開発が行われ、工業製品として数多くのパテントを有しています。福島が築いてきた世界一の脳外科手技の進歩は、先端的な医療機器の開発を無くしては語れません。
これらは福島の技術背景の一端で、現在も日々の経験を蓄積し、独自の着眼点を持って脳外科の医療技術開発を追求しています。
福島式吸引
全世界中で使用されている脳外科手術には欠かせない手術器具。Tear drop shape「涙型」の穴が非常に微妙な、繊細な吸引を産み出す事ができる形になっている。
福島が作り出した手術機械の中でも最も有名な道具の一つである。脳外科手術の際には髄液、血、または腫瘍、くも膜を吸ったりして的確な術野の確保が重要である。またこれらは吸引と同時に周囲の構造をリトラクションするための道具でもあり、非常に繊細な動きが要求される物である。脳外科の手術の善し悪しはこの吸引の使い方次第と言って過言ではないだろう。
福島式頭蓋底手術用剥離子
各種剥離子は腫瘍を分ける時、腫瘍をかき出す時、剥離する時など様々なシチュエーションでの使い分けが必要になる。これらをどのように使い分けるかは術奢次第である。福島独自のオーダを行い開発しこれらを愛用している。
鍵穴手術用バイポーラ
脳外科の手術野は非常に狭いため、手術中の止血が非常に鍵となってくる。鍵穴手術に必要なバイポーラは凝固能力に優れ、凝固した物が焦げ付かない必要がある。また狭い術野で使いやすいように、できるだけ細く先端も繊細な物が求められる。先端の角度も非常に重要であり、先端を15°、30°、45°upのわずかな変化をつけた物をそろえ、長さもS、M、L、LLをそろえ状況に応じた使い分けを行っている。これらの開発にも取り組み様々な意見とアイデアを提供してきた。
福島式リトラクターシステム(Spider, Hooks)
手術を行う際に非常に需要なものに術野の確保がある。以前は大きな皮膚切開が行われていたが、福島式鍵穴手術は皮膚切開も小さく行うため、効率の良い術野確保の為のリトラクションシステムが必要である。その為に開発されたリトラクションシステム。360度全方向にひく事ができるため、最大限の術野確保が可能となっている。またフックも先を丸くしているため、余計な傷を作らず出血を最小限すすると共に術者、看護師など手術器具を扱う者二とっても安全で感染のリスクを減らす事に寄与している。
福島式Keyhole超音波診断機
現在では手術用の小さな超音波診断器のプローベは各種そろってきているが、以前はこのような物は開発されていなかった。脳神経外科手術領域にさらに鍵穴式手術方法に導入するために、小さなサイズのプローベヘッドの開発を行い、当時脳神経外科領域への導入という画期的な使用法を確立した。
福島監修手術用マイクロハサミ
脳外科手術は手術道具が重要。手術の際に遭遇する様々なシチュエーションに対応するため、様々な道具が必要となる。マイクロハサミはショート、ミドル、ロングの長さをそろえ、ハサミの刃の厚さは薄刃、中刃、厚刃。またハサミの先は直、小曲り、大曲とそれぞれをそろえ手術を行っている。
福島監修手術顕微鏡
脳外科の手術、教育に置いて最も重要な道具、顕微鏡(通称マイクロ)である。
カメラのレンズの仕組み、光源、明るさ、焦点深度、フォーカス、フットスイッチでのコントロール、様々な要素が重要であり、この顕微鏡の使いやすさで手術の運びも決まると言っても過言ではない物である。顕微鏡開発は日々進化して更により良い物を求め続け、福島の様々なアイデアがこの顕微鏡開発に反映されてきた。また顕微鏡と同時に手術画像の精密さ、臨場感を伝える為の映像にもこだわり続け、自身の勉強にそして教育に貢献できるように開発に携わってきた。
福島監修手術用コットン
脳神経外科の手術の際には無くてはならない小さい綿(コットン)である。以前は綿が厚く手術野を妨げることがあり、また繊細な脳に張り付いてしまい脳にダメージを与えてしまうことがあった。福島の提案から生まれた薄く、コットン表面の毛羽立ちが少ないコットンが出来上がった。さらに手術の際の様々なシチュエーションに応じた様々なサイズのコットンを作成し、より安全かつ適切な手術を行えるようにした。
鍵穴手術用動脈瘤クリップ、クリップアプライヤー
鍵穴手術の際には、1mmでもほんのわずかな隙間が、重要な鍵となる。以前のクリップアプライヤーは太く、厚かったため、狭い中で動脈瘤のクリップをする際に、クリップアプライヤーの厚さが度々手術野を妨げる事が多かった。新たな開発として以前より細く、薄いそしてわずかな角度の変化を付けられる新しいアプライヤーの作成を提案し、新しいアプライヤーが誕生した。
福島式超音波吸引器(ソノペット)
福島孝徳が初めの開発に携わった超音波吸引機。
超音波により腫瘍、または骨等の固い物も破壊でき同時に吸引する機械。これにより効率的な腫瘍の摘出が可能になった。またドリルでは危険な部位の骨の削除に、超音波吸引器を使用する事でより安全な手術を行う事ができるようになった。
ハンドピースの構造、仕組み、形などは福島自身のアイデアが反映されている。
ナビゲーションシステム
ナビゲーションシステム、3次元空間認識技術を手術分野に導入する初期開発に携わり、当時世界初のナビゲーションシステムを発表している。
頭蓋底腫瘍は非常に奥深く、腫瘍全体を把握する事が難しい事が多いため、
手術中にどの程度の深さに到達しているか、腫瘍をどの程度摘出しているかを、この3次元立体空間把握のできるナビゲーションシステムによって前もって撮影してあるMRI, CTの画像と組み合わせる事によって適切な位置の把握が可能になる。
福島愛用の手術台
手術の際手術ベッドのポジションをこまめに変える事によって手術に適したポジションを取る事ができる。特にこの手術台はポジションを取るのに非常に優れた機能を持っており、最低位410mmまで可能。同時に頭部をあげる事で手術体位を保ちながらベッド下の空間が広く取ることができマイクロのフットスイッチ、バイポーラースイッチ、ソノペットフットスイッチ、ドリルフットスイッチなど様々な用途に応じる事ができる手術台である。
手術用バッグ
手術の際術野を洗い、綺麗な術野を確保する。その際流れ出た水が床に落ちて床が汚れないようにする為に水受けのバッグがある。現在では脳外科の手術の時に無くてはならない物ではあるが、実はこれも福島が提案し開発した物である。手術の際、両手両足を使い手術を行うが、足下が汚れると、非常に手術に支障が出てくるのである。これを改善する為に福島は手術バッグを開発した。
福助手術足袋
細かい手術をする際に両足の動きも重要である。両足を自在にそしてストレスの無い快適な状態を保つには日本の足袋が最高である。
動画で見る福島式手術
福島式吸引器の手元のテクニック
脳外科の手術において、最も大切な技術を要求されるのが吸引のテクニックです。決して強く吸いすぎない事が重要となります。福島が考案したTear Drop Shapeの吸引の穴の開け閉めを巧みに扱い、吸引の強弱を繊細にコントロールする事で手術を成功に導きます。
左聴神経腫瘍の手術
小さな開頭で手術を行い、内耳道の骨を超音波吸引機にて削除し内耳道内の腫瘍まで摘出して、腫瘍の全摘出を行います。最も重要なことは顔面神経を温存する事です。蝸牛神経(聴力の神経)は可能な限りの温存をして腫瘍の全摘出を行っています。
微小血管減圧術2例(顔面けいれん、三叉神経痛)
鍵穴手術による微小血管減圧術の手術です。初めの症例が左顔面けいれんの手術です。脳幹から顔面神経が出てくる場所に後下小脳動脈が当たり血管の拍動が顔面神経を刺激してけいれんを引き起こしています。神経を刺激している血管をテフロンのテープでつり上げ移動する事で、神経に血管が当たらないようにし、けいれんを起こさせないようにする手術です。
三叉神経痛の手術も同様に血管が三叉神経(顔の感覚を司っている神経)を圧迫し刺激しているため、顔の激痛を引き起こしてしまっています。神経を圧迫している血管を剥がして移動させてあげる事で、神経を圧迫から解除させることで顔の痛みから解放することができるのです。