手術を行う際は、日本の白足袋を常に履いて臨みます。理由は二つあり、一つに足袋が足で様々な手術器具のペダルを操作するのに適しているからで、もう一つが足袋を履く所作が、精神を統一し、手術場という戦場へ赴く覚悟を決める儀式になるからです。命を左右する困難な手術で僅かな勝機を勝ち取るには、自身も命を懸けて臨む必要があるのです。
この考えは、子供の頃に、私のヒーローだった戦国武将から学びました。源義経、足利尊氏など、困難な時代に命を賭け、道を切り開く武将の生きざまに強く憧れ、いつか自身も命を懸けて何かをやり遂げていく、と漠然と思っていました。
このように心に戦国武将を宿している私は、鹿児島空港に降り立つたびに目に入る、「甲冑工房丸武」という看板がずっと気になっていました。調べると「甲冑工房丸武」は、川内市にある戦国時代の甲冑を作る会社で、黒澤監督の映画や大河ドラマなどで使用する甲冑を担当しているとのこと。子供の頃から戦国武将に憧れていた私は、強く興味を持ちました。
鹿児島の滞在中は、連日のように手術のスケジュールがはいっているため、「甲冑工房丸武」にはなかなか訪問することができなかったのですが、この度、念願がかない、やっと訪れることができました。そして、夢だった憧れの将軍の甲冑を作って頂きました!
源義経の緋縅鎧、室町幕府開祖 足利尊氏、織田信長、島津義久 諸公各々の素敵な面を合わせたデザインとし、名称を「色々威将軍鎧」としました。1500年代の戦国将軍の実践的かつ芸術的甲冑鎧一領を再現しています。糸から組み紐、布地、鉄板、くさりかたびら、甲まで、すべて手造りで、500年前の戦国時代の大将甲冑と同じ作りです。甲冑は、甲冑工房丸武さんが6カ月の歳月をかけ入念に製作して頂きました。500年前ならば、500両(約6,000万円)するそうです。
合戦時の甲冑です。領民たちを安心させ、全軍の士気を高めるために、「出陣式」でも使用されます。
肩から上腕部を保護する「大袖」(おおそで)がないバージョンの甲冑姿です。大刀と小刀は、抜きやすい様にお腹の前にさしています。鎧には、福島家の家紋である「違い鷹の羽」を入れています。
臨戦態勢の時の甲冑です。敵とある程度の距離を保ち、にらみ合った状態の軍議時などで使用されます。何時でも甲冑が着れる様に、小具足(籠手、臑、佩楯)、陣羽織、烏帽子を着用しています。羽織と軍配には福島家の家紋である「違い鷹の羽」を入れています。