福島孝徳教授 日本手術行脚 同行記(2013年11月15日~12月5日)

2013年11月15日、大阪畷生会病院手術室で福島孝徳教授と合流した。本日帰国したにもかかわらず、福島教授には疲労や時差を感じさせる気配など微塵も感じさせなかった。むしろ母国に戻られた事が拍車をかけるのか、米国での教授より意気揚々としていた。

日本手術行脚とは約2ヶ月に1度、本拠地である米国より帰国し、約3週間程度日本に滞在する。その間、待機されている難易度の高い患者の手術のため全国各施設に往来することである。今回の予定は11月15日から12月5日のうちミーティング及び上海教育コースを除く2週間、北は北海道、南は福岡県まで患者数31名 であった(詳細は下記)。その日本手術行脚に初めて同行した。

米国と比較し日本での手術症例は比較的早期の治療が望ましく、且つ難易度の高い症例が集中する。待機されている方が多く滞在期間が短い為、迅速確実に手術をこなし、合併症なく治癒させていく必要がある。一方米国と同様、他施設部分切除例や再発症例も多く、初回手術の重要性を実感する。今回の日本手術症例も31名中9名が他施設での不十分治療後の再発例であった。今回31症例はいつもの如く全症例大きな合併症もなく、無事終了した。手術困難な症例での教授の経験と技術が光る場面が多々見られ、個人的に大きな経験を得ることが出来た。これから頭蓋底外科手術症例15000例以上の経験を持つ福島教授の経験数に勝ることは出来ない。しかし手術症例から必ず何かを学び、復習し、それを自分の経験と技術に変換する、そうすれば少しでも福島教授に近づけるのではないか…。

さて今回、個人的には多彩な手術症例の見学のみならず、各施設における設備や環境の見学も目的の一つであった。また各施設の諸先生の話を伺い、交流を得る事もこの日本行脚同行の目的であった。米国に比較して日本の医師・看護師の手術関連技術は非常に高いと実感した。人種の違いと言えばそれまでであるが、日本では細かい配慮があり、無駄が少ない。悪い点を改善しようと常に思案している。過程を重要視し、それをもとに結果につなげて行く。米国とは大きな違いであった。いずれにしても日本の手術関連技術を外部から見る事ができたのは非常にいい機会であった。

福島教授が米国に戻った後、変わらずフル回転で手術をこなし、1週間後に再度日本に飛び立った。

今回の日本手術行脚での施設・症例(順不同)

・畷生会病院(大阪府)
 視床部海綿状血管腫(Fig1)、三叉神経痛再発、顔面痙攣、頭蓋咽頭腫再発(Fig2)、大脳鎌髄膜種

・いずみの病院(高知県)
 後下小脳動脈瘤、錐体斜台テント髄膜種、聴神経腫瘍再発、成長ホルモン産生下垂体腺腫再発

・総合南東北病院(福島県)
 聴神経腫瘍、顔面痙攣再発

・新百合ケ丘病院(神奈川県)
 聴神経腫瘍、巨大下垂体腺腫再発、頭蓋咽頭腫再発、頭蓋咽頭腫初発、神経節細胞腫、左内径動脈眼動脈分岐部動脈瘤

・森山記念病院(東京)
 側頭葉類表皮腫、前床突起海綿静脈洞部髄膜種(Fig3)、

・島本脳神経外科病院(福岡県)
 顔面痙攣、錐体斜台部髄膜種

・新小文字病院(福岡県)
 顔面痙攣、錐体部髄膜種、蝶形骨縁髄膜種、聴神経腫瘍、頭蓋咽頭腫、巨大下垂体腺腫再発(Fig4)

・湖東記念病院(滋賀県)
 小脳橋角部脂肪腫、三叉神経鞘腫

・孝仁会記念病院(北海道)
 頸静脈部髄膜種、頭蓋咽頭腫再発

2014年1月21日