
はじめに
脳腫瘍は、決して珍しい病気ではありません。東京都だけでも毎年4,000人が発症しており、1cm未満の小さな腫瘍や他臓器からの転移性腫瘍を含めると、さらに多くの人が脳腫瘍と関わっています。この記事では、福島孝徳医師による解説をもとに、脳腫瘍の種類や治療方針、良性と悪性の違い、医師選びの重要性などをわかりやすく整理します。
脳腫瘍とは
- 脳のあらゆる部位に発生する可能性がある腫瘍で、WHO分類では158種類。
- 脳深部や頭蓋底も含め、場所によって症状や手術の難易度が異なる。
- 小さなものでも症状を出すことがあり、年1回の脳ドックによる早期発見が重要。
良性と悪性の違い
神経膠腫(グリオーマ)における分類と特徴
神経膠腫は、神経を支えるグリア細胞から発生する腫瘍で、良性から悪性まで幅広いタイプが存在します。多くは脳実質内に発生し、びまん性に深く広がるため、たとえ良性でも予後に影響することがあります。
WHOの分類では、以下のようにGrade1〜4に分けられ、悪性度と予後の目安が定められています。
グレード | 特徴 | 予後の目安 |
---|---|---|
Grade 1 | 毛様細胞腫。小児〜若年に多く、全摘可能な場合あり | 全治の可能性あり |
Grade 2 | 良性だが浸潤性あり ※全治可能なのは1.5㎝以内の腫瘍 | 約5〜10年 |
Grade 3 | 悪性 | 約3〜5年 |
Grade 4 | 最悪性(膠芽腫など) | 約2年以内 |
グリオーマの治療方針
Grade2以下で局在性かつ小型(2cm以下)の場合
- 福島式「鍵穴手術」(5〜10mmの剥離)により、全摘出・全治が可能なケースがあります。
- 合併症のリスクも比較的低く、安全に治癒が期待できます。
それ以外の大きなもの・浸潤性の腫瘍の場合(Grade2含む)
- 合併症を避けながらできるだけ多く腫瘍を切除し、病理検査で詳細を確認します。
- Grade2と診断された場合は、まず化学療法を優先し、放射線治療は副作用や悪性化リスクを考慮してできるだけ遅らせます。
Grade3〜4(悪性度が高い場合)
- 可能な範囲で切除を行い、その後に化学療法・放射線治療を併用する集学的治療が基本となります。
- 治療の難易度が高いため、グリオーマ治療を専門とする大学病院などでの治療が推奨されます。
執刀医選びの重要性
脳腫瘍の約3分の2は、脳の周囲や外側に発生する良性腫瘍です。これらは、適切な手術により高確率で全摘出・全治が可能です。ただし、その手術を安全かつ確実に行うには、次のような医師の条件が必要です。
- 当該脳腫瘍の手術経験が数百例以上あること
- その経験を背景とした、高い顕微鏡マイクロ技術を有していること
手術の成否は、医師の技術と経験に大きく左右されます。医師選びは、治療の結果を左右する大切な判断のひとつです。
詳しくは「Dr.福島が解説する「脳腫瘍(のうしゅよう)」
2025年6月20日