鍵穴手術とは?

鍵穴手術と従来の回答法の違い

鍵穴手術とは?

「鍵穴手術(Keyhole Surgery)」とは、脳外科手術において頭を開く範囲(開頭)をできるだけ小さくし、患者さんの身体的負担やリスクを減らすことを目的とした手術法です。
この手術法は、脳神経外科医・福島孝徳が考案したものであり、現在では世界的に知られる代表的な脳外科手術の一つとなっています。

小さな開頭で行う脳の手術

従来の脳外科手術では、腫瘍や血管の異常など病変のある部位に到達するために、頭の骨を大きく開ける必要がありました。しかし、鍵穴手術では直径1〜3センチほどの小さな開口部を設け、そこから顕微鏡と細い専用の器具を挿入して手術を行います。わずかな開頭からでも十分な視野を確保できるよう、顕微鏡の角度や照明、骨の削り方などに高度な技術が用いられます。

この「鍵穴のように小さな開頭」が、手術名の由来です。

図1 従来の開頭
鍵穴手術
鍵穴手術

手術の目的と特徴

鍵穴手術の目的は、患者さんの負担を最小限に抑えながら、確実な治療を行うことです。そのため、次のような特徴があります。

  • 小さな傷口で済む →  出血や痛みが少なく、回復が早い。
  • 脳への圧迫を減らせる → 脳の働きを守りながら手術ができる。
  • 見た目の傷跡が目立ちにくい → 手術後の生活にも配慮されている。
鍵穴から見える脳神経
皮膚を十分に引き、小さくも十分な手術野を確保する
約2cmの開頭

主な対象疾患

鍵穴手術は、次のような脳・神経疾患に対して行われています。

  • 髄膜腫
  • 聴神経腫瘍
  • 下垂体腫瘍
  • 三叉神経痛
  • 顔面けいれん
  • 頭蓋底腫瘍

いずれも、頭の深部や神経・血管が密集した部位に存在する病変であり、従来の大開頭手術ではリスクが高いとされてきたものです。
鍵穴手術では、安全なルート設計と精密な操作によって、これらの病変を的確に治療します。

高度な技術と専用の器具

小さな開頭で手術を行うには、顕微鏡下での繊細な操作技術と、専用に設計された器具が不可欠です。
福島は、手術方法の開発に加え、実際の手術現場で使用する器具の開発・監修も行っています。

主な器具には次のようなものがあります。

  • 福島式吸引管:先端をしずく型に設計し、出血を最小限に抑える
  • 専用のはさみ・ピンセット:細く狭い空間でも精密に操作できる形状
  • リトラクター(保持具):脳をやさしく保持し、安定した術野を確保する

これらの器具は、脳や神経、血管を損傷しないよう配慮されており、安全で確実な鍵穴手術を実現するための重要な要素となっています。

すべての症例に適用できるわけではない

鍵穴手術は非常に有効な方法ですが、すべての症例に適用できるわけではありません。
腫瘍の大きさや位置、性質、患者さんの全身状態によっては、より広い開頭が必要となる場合もあります。
そのため、各症例に応じて最も安全で適切な手術方法を選択することが重要です。

鍵穴手術の意義

鍵穴手術は、

「小さな開頭で大きな成果を上げる」
という理念のもとに確立された、患者さんにやさしい脳外科手術です。

福島孝徳が開発したこの手術法は、長年の臨床経験と技術革新によって進化を続けています。
その目的は、安全で確実な治療を行い、患者さんの回復を最優先すること。

この理念と実践の積み重ねこそが、福島式鍵穴手術の核心です。


詳しくは「福島式手術」

2025年10月30日
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