飲み込むと、のどや耳の奥が鋭く痛むのはなぜ?舌咽神経痛の症状・原因・治療法

水を飲み込んだとき、のどの奥から片方の耳にかけて鋭い痛みが走る。会話やあくびでも同じ痛みが起こり、食べることまで怖くなってしまう。

こうした症状を起こす病気の一つに、舌咽神経痛(ぜついんしんけいつう)があります。耳やのどが痛くても、原因がその場所の炎症ではなく、感覚を伝える神経にある場合があります。

ただし、飲み込むときの痛みをすべて舌咽神経痛と考えることはできません。のどや耳などの病気を調べたうえで、痛む場所や起こり方、画像検査の結果を合わせて診断します。

舌咽神経痛とは

舌咽神経は、舌の奥やのどの感覚などに関わる脳神経です。舌咽神経痛では、その周辺に突然、電気が走るような、あるいは針で刺されるような強い痛みが起こります。

痛むのは主に左右どちらか一方で、のどの奥、舌の付け根、耳の奥、あごの角の下などです。のどから耳へ響くように感じることもあります。近くを通る迷走神経の感覚領域も関わるため、痛む場所には幅があります。

どんなときに痛みが起こる?

飲み込む、話す、せきをする、あくびをするといった動作が、痛みのきっかけになります。短い発作を繰り返すのが特徴で、典型的には数秒から2分程度続きます。

痛みが治まっている間には、普段どおりに感じられる場合もあります。しかし、次に飲み込んだときの痛みを恐れて、食事や水分を十分に取れなくなることもあります。

のどや舌の奥、耳の奥に起こる鋭い痛みと、飲み込む・話す・あくびという誘発動作の例
図は症状の一例です。オレンジ色の記号は痛みを表し、皮膚の炎症や神経の位置を示したものではありません。痛む場所やきっかけには個人差があります。

痛みが長く続く場合や、常に焼けるように痛む場合には、別の神経の痛みや、のど・口の病気なども含めて調べます。痛みの強さや持続時間だけでは見分けられません。

のどの病気や三叉神経痛とはどう違う?

のどの痛みでは、扁桃などの炎症や腫瘍を含む、耳鼻咽喉科の病気を確認する必要があります。診察で、口やのど、耳に痛みの原因となる異常がないかを調べます。

三叉神経痛も、顔や口の周囲に短く鋭い痛みを起こします。舌咽神経痛との区別では、どこが痛むかが大きな手がかりになりますが、耳やあごの周囲の痛みは紛らわしい場合があり、両方の神経痛を伴うこともあります。

「飲み込むとのどから耳へ響く」「顔に触れると頬やあごに痛みが走る」など、痛みの始まる場所ときっかけを具体的に伝えてください。自分でのどを触って痛みを確かめる必要はありません。

舌咽神経痛の原因と検査

原因の一つは、舌咽神経が脳幹につながる付近で、血管による圧迫を受けることです。一方、腫瘍など別の病気が関係する場合や、検査をしても原因がはっきりしない場合もあります。

診察では、痛む場所、痛みの性質、発作の長さ、誘発する動作、これまでの薬の効果を確認します。MRIでは神経と血管の関係や、腫瘍などの有無を調べます。

舌咽神経と周囲の血管は細く、圧迫が画像ではっきりしない場合もあります。画像だけで判断せず、症状と検査結果を合わせて診断します。

薬による治療

舌咽神経痛では、神経の過剰な興奮を抑えるカルバマゼピンなどを使い、痛みの軽減を図ります。福島教授も、薬による治療を説明しています。薬は血管の圧迫そのものを取り除くものではありませんが、痛みを抑える役割があります。

なお、カルバマゼピンの国内の承認された効能・効果には、三叉神経痛は含まれますが、舌咽神経痛は含まれていません。使用する場合は、治療の必要性や期待できる効果、副作用について、処方する医師から説明を受けてください。

服用中に気をつけたいこと

カルバマゼピンでは、眠気やめまい、ふらつきなどが起こることがあります。服用中は自動車の運転や危険を伴う機械の操作を避けてください。肝臓や血液などへの影響にも注意し、医師の指示に従って検査を受けます。併用している薬や妊娠・授乳の状況も、診察時に医師へ伝えます。

発熱を伴う発疹、水ぶくれ、目の充血やただれ、唇や口の中のただれなどが現れた場合は、重い副作用の可能性があります。次の診察日まで待たず、ただちに処方した医師へ連絡して受診してください。連絡がつかないときも待たずに、救急外来などで診療を受ける必要があります。薬の服用をどうするかも、医師に確認します。

普段の薬の量を、痛みの強さに応じて自己判断で増減しないでください。薬が効かない場合も、副作用が気になる場合も、処方した医師と調整します。

手術を検討するのはどんなとき?

薬を使っても痛みを十分に抑えられない場合や、副作用で薬を続けにくい場合には、脳神経外科で手術を検討します。

血管による神経の圧迫に対しては、その圧迫を解除する微小血管減圧術(MVD)を検討します。腫瘍が関係する場合には、腫瘍・神経・血管の位置関係を確認し、腫瘍の治療も含めて方針を考えます。手術を受けるかどうかは、診断、画像所見、薬の効果、全身状態、ご本人の希望を踏まえて判断します。

福島教授の手術法とMVT

福島孝徳教授は、圧迫している血管を神経から離し、別の位置へ移動・固定する神経血管転置移動術(MVT)を重視していました。MVTは、微小血管減圧術の方法の一つです。

耳の後ろから小さく開頭し、顕微鏡で神経と血管を確認して、原因となる血管を移動させます。福島式の方法では、テフロン素材で血管を支え、フィブリンのりを用いて神経から離れた位置に固定します。

血管と神経の間へできるだけ物を挟まないのは、神経周囲の癒着や再発、再手術時の剥離の難しさを避けようとする考えによるものです。具体的な固定方法は、血管や神経の状態に応じて異なります。

血管が舌咽神経を圧迫する状態と、血管を離し帯で支えて固定した状態の模式図。近くの迷走神経も示す
図は、血管を神経から離し、帯で支えて固定するMVTの一例です。近くを通る迷走神経も示しています。神経や血管の太さ・距離は模式的で、周囲の血管・組織の一部を省略しています。固定する場所や方法は症例によって異なります。

手術後の経過とリスク

手術で痛みの改善を目指せますが、痛みが残る場合や、再発する場合もあります。薬を減らす時期や、食事・仕事へ戻る時期は、手術後の状態を見ながら担当医と相談します。

この手術では、飲み込みにくさや声のかすれ、聴力の低下などの神経症状に注意が必要です。症状が一時的に起こる場合も、長く残る場合もあります。そのほか、全身麻酔に伴う問題、傷の感染、出血や脳梗塞などの可能性があります。

特に、手術後にむせる、声が変わった、飲み込みにくいと感じたときには、無理に食事を進めず医療者へ伝えてください。手術を検討する段階で、期待できる効果と、自分の場合の合併症のリスクを確かめておきましょう。

受診を急ぐ症状と相談先

のどや耳の奥に鋭い痛みを繰り返すときは、まず耳鼻咽喉科などで原因を調べ、必要に応じて脳神経外科・脳神経内科にも相談してください。痛みで食事や水分を取れない場合は、受診を先延ばしにしないでください。

舌咽神経痛では、まれに痛みとともに脈が遅くなったり、失神したりすることがあります。痛みに伴って気を失ったことがある場合も、必ず医師へ伝えてください。意識が戻らない、反応がおかしい、呼吸が苦しい場合は、救急車を呼んでください。

受診時には、痛む場所ときっかけ、発作の長さ、食事や水分を取れているか、これまでの薬の効果を伝えると診察の助けになります。以前の検査結果やMRI画像、薬の情報があれば持参してください。

参考資料

2026年10月15日