【論説】 良い病院か否かの判断基準は、難しい手術の手術数とその成功率

困難な手術を合併症なく治療できるかが重要

近年、手術数を基に病院を比較する考えが見られています。手術数はひとつの目安ですが、必ずしも「良い病院」の指標ではありません。単純なことで、普通の難度の手術(第1群)を多数行なってもそれは「普通の病院」に過ぎず、決してベストな病院とは言えません。「難度の高い困難な手術(第2群)」の手術数と、その成功率及び重大合併症率(死亡率も含む)によって、真に良い病院がわかります。そして、ドクター自身の難手術の経験数と重大合併症リスク率、患者さんからの感謝の数が良医か否かの判断基準になります。

全国からデータを集める際、第1群症例(良性・単純)、第2群症例(良性・困難)、第3群症例(全治困難な悪性腫瘍)を明白に分類することが重要です。データの正当性を判定するチェック機構も必要でしょう。今後、英国や中国のように、日本も治療の適用範囲に応じて病院を分類すると共に、ドクターも同様のハンディキャップ制を課していかねばならないと考えています。

上記のようなデータ集積の例として、全国の福島孝徳関連13施設の脳腫瘍、脳動脈瘤、神経血管減圧術(MVD)について、第1群、第2群の手術数と合併症率を示します。なお、脳腫瘍の第3群は化学療法、放射線治療、免疫療法を含む総合的な治療を要する浸潤性悪性脳腫瘍、神経膠腫(グリオーマ)を示すため、この手術結果で良い病院の判定はできません。

<表1>福島孝徳教授 関連13施設 2014年度(1~12月)報告

福島孝徳教授 関連13施設 2014年度(1~12月)報告


良性脳腫瘍・頭蓋低腫瘍の手術への熟達医が必用

日本は諸外国に比べ、脳卒中(脳血管病)の患者さんが多い国です。従って、日本の脳外科専門医はあまねくバイパスや脳動脈瘤手術を得意としています。他方、難度の高い良性脳腫瘍や頭蓋底腫瘍のエキスパートが少ないのが現状です。

私は、本年在来25年になりますが、今でも年間600例の手術を執刀しています。Duke大学脳神経外科センターは目下、年間6,000例(2014年1~12月)の手術を行っており、脳腫瘍手術総数2,000例(うち、神経膠腫1,200例)で世界最大の脳腫瘍センターとなっています。Duke大学では、定位放射線治療や、脳動脈瘤、脳動静脈奇形に対する血管内治療も手術数には入りません。これらは全く別のカテゴリーの治療法であり、脳神経外科開頭手術とは区別すべきと考えているからです。

脳動脈瘤も、破裂くも膜下出血例と未破裂例を区別すべきです。破裂した脳動脈瘤手術は、重症度、出血による損傷、脳血管攣縮や水頭症など、手術以外の出血による合併症があるからです。脳動脈瘤手術の良い病院、エキスパートの判断は10ミリ以上の未破裂の難しい動脈瘤の全治率、合併症率で判断せねばなりません。