【提言】脳ドック、PETがん検診の勧め

日本は、世界一の長寿国です。2014年度の平均寿命は、女性86.83歳、男性80.50歳となり、ともに過去最高を更新しました。しかしながら長生きすればその分、がんになる確率も上がります。がんは、現在、国民死亡率1位であり、死亡者数は35万人にものぼります。その数も毎年1万3000人ずつ増えている状況です。小児の脳腫瘍やがんも増えてきており、特に小児のがんの場合、発見された時にはすでに手遅れということも少なくありません。

脳腫瘍や頭蓋底腫瘍、がんの対策の要は、なんといっても検診による早期発見です。日本は世界一医療費が安く、検診の費用も極めて廉価ですので、定期的に脳ドック、PETがん検診を受けていただきたいと思います。日本の場合、自費の検診なら4~5万円、PET検診でも10万円程度で受けることができます。例えば、アメリカの医療費は高額で、ICU入院料金は7000$/、CTは1500$/回、MRIは4000$、です。猫のMRIでさえも3000$です。日本の医療費がどれだけ安いのかがわかると思います。

人間ドック・脳ドックの検査機器(CT、MRI、PET)は、現在、とても高解像度で、ミリ単位以下の異常でさえ発見することができます。人間ドックで、1~2センチ以内で腫瘍を発見できれば、早期手術によりほとんどの方々が合併症なく全治します。また脳ドックでの異常発見率は約5%で、これは通常の集団検診数10倍の有効率です。

がんの対策は、早期発見、早期手術による全切除、全摘が最善です。巷に出回っている“医者に殺されないため”、“切らずに全治”などの、センセーショナルなタイトルの本を信じてしまう方がいることをまことに残念に思います。確実な医学知識、医療技術を持ち、豊富な臨床経験を有した熟練医による、正しい治療と判断を受けることを切に願っています。

今こそ、赤ちゃんからお年寄りまで、年1回の脳ドック、PETがん検診を強く勧めます。たとえ大きく進行して発見された場合でも、現代では、手術、放射線治療、化学療法などの先進医療によって、全治あるいは長生きする患者さんが多くいるのです。

2016年2月1日