「医療魂」掲載 特別対談「貴田 宏 × 福島 孝徳 ~コロナの真実/コロナの嘘」 ※一部転載

「医療魂」に掲載された、特別対談「貴田 宏 × 福島 孝徳 ~コロナの真実/コロナの嘘」の一部を転載します。

「医療魂」掲載 特別対談「貴田 宏 × 福島 孝徳 ~コロナの真実/コロナの嘘」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の出現から、既に2年半が経過した。しかし人類は未だ、このウイルスに勝利宣言をすることができない。そんな中、「神の手」を持つ脳神経外科のスーパードクター・福島孝徳と人獣共通感染症研究の第一人者・喜田宏とのスペシャルな対談が行われた。お二人の対談を通じてCOVID-19の本質を知り、我々がこの先どうあるべきなのか、改めて考える必要があるだろう。
(進行 林屋 克三郎)

「変異」に対する誤った考えがコロナ対策にも影響を与えたと思います

福島 私は医療に携わる者として、感染症についての正しい知識を持つことは、最低限の責務だと考えています。そこで今回は喜田宏先生に、巷に溢れるCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の情報に関して、何が正しくて何が間違いなのか、色々とお聞きできればと思い、参りました。今日はよろしくお願いいたします。

喜田 はい、こちらこそお願いします。

福島 中国の武漢といえば、COVID-19が最初に検出された都市ですが、当初からさまざまな憶測が飛び交いました。米国のある専門家が、COVID-19は武漢ウイルス研究所で遺伝子操作をして出来たもの、という発言をしましたが、 これについてはどう思われますか?

喜田 あくまでも可能性の一つとして否定はしませんが、うーん ・・・ どうなんでしょうね。
 武漢市で検出されたCOVID-19が、WHOの中国事務所に通知されたのは、2019年12月31日。この時点では病因不明の肺炎だと考えられましたが、最初からウイルスが持つアミノ酸の配列が異常で、病原性が強かった。もしかしたら、報告されるずっと以前から人に感染して、受け継がれてきた可能性がありますね。
 年明けの1月22日に、WHOが最初のEmergencyCommittee(緊急委員会)を招集して、委員の私は参加しました。中国サイドの発表によれば、感染者は500人ほど。「それは入院患者の数か」と尋ねますと「そうだ」との返答がありました。でもそれは、発病者の数を見ただけで、実際は無症状の感染者がその何倍もいたはず。
 500人というのは本当に、氷山の一角ですよ。

福島 ところで、昨年の終わり頃からオミクロン株が出てきて、それまで猛威を振るっていた悪玉のデルタ株などが影を潜めました。私が思うに、オミクロン株は「のど風邪」程度のもので、大騒ぎする必要はないと感じていましたが、それは間違ってますか?

喜田 いや、その辺は誤解が生じやすいので、きちんとした説明が必要でしょう。
 一般にパンデミック(世界的大流行)を起こすウイルスは、病原性が高いと言われていますが、それは人々がそのウイルスに対する免疫を持っていないため、パンデミックとなるわけです。動物からヒトに入ったばかりのウイルスは、ヒトの体内でそれほど増えません。
 つまり、伝播性が高くても病原性は低い。それが2波、3波と感染が進むにつれ、病原性は高くなっていきます。
 RNAのゲノムを持つウイルスは、変異ウイルスの集まりです。実は膨大な数の変異ウイルスがあり、ヒトで増えやすいウイルス、病原性が高いウイルスが選ばれるのです。今回は、その代表格の1つにたまたま「オミクロン」という名前が付いただけ、と思ってください。

福島 ということは、デルタ株だから怖いとか、オミクロン株だから大丈夫という話ではない?

喜田 オミクロン株だから大丈夫なのではなくて、時間の経過とともに人々が免疫を獲得し、ウイルスに抵抗できるようになった結果、重症患者が減少したのです。もしもオミクロン株が感染拡大の初期段階に出現していたら、死者はもっともっと出たはずです。
 要するに「変異」に対する誤解があるのです。変異とは遺伝子の変化です。遺伝子の本体であるDNA(デオキシリボ核酸)は4種類の塩基性物質 ーー A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン) ーー の並びによって遺伝情報を表しています。これらが何かの理由で入れ替わったり、他のものが入ったり、抜けたりすると間違った情報が伝わり、本来作られるはずのタンパク質ができなくなる。たった1つの塩基性物質の並び方が変わっただけでも変異が起きるのですから、変異ウイルスが次々と出てくるのは当然のことです。

貴田 宏 × 福島 孝徳

病気とは、ヒトと動物、ウイルスの相互作用。ヒトの反応を無視してはいけない

福島 よく、テレビなどで「ウイルスは利口だから病原性はそのうち下がりますよ」と解説するコメンテイターがいますけど、あれは真実ですか?

喜田 冗談じゃないよ、と思いますね。何よりまず、ウイルスを擬人化するなど、もってのほかです。
 例えばインフルエンザウイルスは、自然宿主である鴨に対して、何の危害も与えません。それは、何万年もかけてお互いが安定した共生関係を築いてきたから。
 今回のCOVID-19のように、突然出現したウイルスはヒトからヒトに受け継がれていく中で、結果的に病原性が高くなります。「感染した人が起こす反応」がすなわち病気ですから、最初の段階でウイルスの増殖が抑えられれば病気にかからず、重症化も避けられます。
 今回のパンデミックで、PCR検査を知った方が多いと思いますが、はっきり言ってあれは検査というよりも遺病気とは、ヒトと動物、ウイルスの相互作用ヒトの反応を無視してはいけない「変異」に対する誤った考えがコロナ対策にも影響を与えたと思います
00 伝子の破片を見つけるものだとお考えください。
 日本ではPCRのCt値を40~45に設定しているので、10~1000個程度の遺伝子の破片が検出されると、遺伝子の状態に関係なく、陽性と判定されてしまいます。
 だから混乱が起きて、ものすごい数の感染者がいることになる。検査の数だけ、陽性が増える。こんなやり方では、本当に社会全体が機能しなくなります。

福島 まったく、その通りですね。

喜田 COVID-19に感染して亡くなる場合は、特殊なケースであることが多いのです。
 例えば、高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染して亡くなった方々は、ウイルスに対する感受性が、言ってみれば鶏に近い。そういう人が、ごくわずかですが存在しています。ここでいう遺伝子の特徴とウイルスの病原性は、まったく別次元の問題なのです。
 そういえば、2009年に起きた鳥インフルエンザ騒ぎの時に、こんなことがありました。私の元を訪れたある記者が「 今回は新型のウイルスだから、毒性が強い。大変でしょう」と言うので、「冗談じゃない、そんな間違いを広めないでくれよ」とその記者に怒りました。あの時は15ヶ月経過した時点でも、全世界で死亡者数は1800人にとどまった。理由は、ウイルスの伝播性が高くてもヒトの体内で増えなかったからです。
 病気はヒトと動物、ウイルスの相互作用によるものです。ヒトの反応を無視してはいけない。その辺のことをよく理解しないと、判断を間違えます。

福島 わかりました。

喜田 一方、季節性インフルエンザの場合は、ヒトの体に慣れているため増殖しやすい。だから新型よりも、季節性の方が恐ろしいのです。それなのに「季節性インフルエンザウイルス並に毒性が低い」などという言い方が横行する。これなど、二重の意味で間違っています。

貴田 宏 、福島 孝徳 プロフィール

今回の教訓を将来のパンデミックにどうやって生かすかが大切

福島 例えばスウェーデン政府などは、日本のような自粛や休業補償などをせず、マスクの着用も個人の判断に任せてきたようです。それでも、経済や社会活動の再開は着実に進んでいます。このような諸外国のコロナ対策については、どう思われますか?‥

※続きは、「医療魂」第2号にてご覧ください

2022年9月16日