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三叉神経痛

 

三叉神経痛とは

三叉神経痛とは顔に痛みのでる病気です。顔の感覚(痛覚、触覚、冷熱感)を脳に伝える神経が三叉神経ですが、この三叉神経に痛みが起こり、顔を痛く感じるのが三叉神経痛です。

 

三叉神経痛の主な症状

三叉神経痛の顔の痛みにはかなり特徴があります。痛みは非常に強いものですが、突発的な痛みです。一瞬の走るような痛みで、数秒のものがほとんどで、ながく続いてもせいぜい数十秒です。5分10分と続くような痛み、じりじりとした痛みなどは三叉神経痛ではないことがほとんどです。三叉神経痛では痛みはいろいろな動作で誘発されます。洗顔、お化粧、ひげそりなどで顔に痛みが走ります。

また、食べたり噛んだりする動作に誘発されることもありますし、つめたい水を飲むと痛みが走ることもあります。痛みで歯磨きができないこともあります。触ると痛みを誘発されるポイントがあり、鼻の横などを触ると、顔面にビッと痛みが走る、という場合は三叉神経痛の可能性が高いです。季節によって痛みが変動するのも特徴です。

 

三叉神経痛の主な原因

三叉神経は顔の感覚を支配している神経です。神経は脳幹という脳の中心部の中から始まり神経の線維を出し、脳槽という空間を通りテントと呼ばれる構造の中に入って行きます。そこから3本の大きな枝を出しさらに細かい神経の線維を顔、頭の全体に伸ばし、それぞれを支配している神経です。

多くは血管による神経の圧迫が原因です(約90%)。その神経の始まりの脳幹から出てすぐのところで、血管(動脈や静脈)が三叉神経を強く圧迫して血管が拍動する事により、神経に強い刺激が加わり痛みを引き起こしています。腫瘍(類上皮腫や神経鞘腫、髄膜種など)による圧迫が原因のこともあります(約8%)。稀な原因としては脳動静脈奇形という血管の奇形による三叉神経への影響が原因の事もあります(約0.5%)。

 

三叉神経痛の診断

三叉神経痛の診断には、痛みの症状や病気の経過の詳しい聞き取りがもっとも大切です。この病気の診療になれた医師が詳しく問診することによって、かなり病気の診断の見当がつきます。しかし痛みが典型的でない場合や、症状の訴えがあまりはっきりしない場合、診断が難しいこともあります。診断は1.5テスラまたは3テスラMRIによる三叉神経にまたはループを形成する血管の存在。顔面神経の起始部の脳幹部への血管圧迫所見。又は腫瘍の存在。これらは非常に細かい神経と血管であるため場合に寄っては明らかな血管や神経の圧迫が画像所見だけでは証明できない場合がある為、症状と画像診断を合わせた専門的な診断を行わなければなりません。

 

区別しなくてはならない病気

三叉神経痛(特発性三叉神経痛)と区別しなくてはいけない病気に、帯状疱疹後三叉神経痛があります。帯状疱疹はウイルスがおこす皮膚の病気です。帯状疱疹のウイルスは神経に潜んでおり(子供の時にしている水疱瘡のウイルスです)、神経に沿って症状を引き起こすのが特徴で、顔では三叉神経の分布に一致した皮膚の症状(皮疹)が出ます。過去に顔に帯状疱疹が起こった事ことがあると、三叉神経痛と同じような痛みが出てくることがあります。痛みの症状の発生と同時期に顔面、頭の中の皮膚に赤い発赤、水ぶくれがあり、その部分に一致して痛みやかゆみが持続する場合は帯状疱疹を疑った方が良いでしょう。
帯状疱疹後三叉神経痛以外は、よくお話を聞くと痛みの性質が三叉神経痛とは違っていますので、症状が重要になってくるのです。

また舌咽神経痛は三叉神経痛と同様の痛みがのどの奥に起こります。ものを飲み込んだときに痛みが引き起こされます。耳の穴の奥の方、首の前面に痛みが走るように感じる場合があります。非常にまれなものですが、三叉神経痛と区別しておく必要があります。三叉神経痛と同様に舌咽神経に対する血管の圧迫が原因です。

 

治療方法

血管の物理的な圧迫による症状なので、最も効果的な治療は外科的手術による、微小血管神経減圧術Microvascular transposition: MVT (またはMicrovascular decompression: MVD)という方法です。これは顔面痙攣や三叉神経痛と同じ治療法です。手術により神経を圧迫している血管を剥離して神経から剥がし、場所を移動する事により、神経の圧迫を解除して痛みの原因を取るという手術方法です。
手術治療は原因を取り除く根本的な治療になるので、最も効果的な治療になります。

投薬治療としてはカルバマゼピン(商品名テグレトール®)などの抗痙攣薬を用いた痛みを緩和させる治療も可能です。しかし、これは根本的な治療ではない為、痛みを完全にコントロールできない場合や、初め痛みを完全にコントロールできても、後々再発してしまったりする事があります。

カルバマゼピンとはてんかんのお薬です。神経神経の伝導を抑える作用がありますが時に副作用を起こす事があります。具体的な症状としては、眠気やふらつき、または薬が体に合わない場合感機能障害を起こすこともあります。一番気をつけなくてはならない症状は薬が体に合わず、粘膜を中心として全身に発疹、水ぶくれが生じ、更に進行してしまうと全身の臓器の機能が悪くなるStevens-Johnson 症候群を起こす事があります。これは飲み始めて少し経過してからも起こる可能性もあり、定期的な血液検査や診察、疑いのある場合はすぐに薬を中止しなくてはならないものですので、十分な注意も必要です。

 

福島式手術法

皮膚の切開は約4センチメートルの小さな切開のみで行います。耳の後ろの約5センチ後方に緩いS字の切開を置きます。この位置は通常髪の毛の中に入っていますので、手術後傷が目立つ事はありません。頭蓋骨に約直径3センチメートル程の穴を空け、後頭蓋窩という小脳があるスペースに入ります。小脳を傷つけないように避けて脳槽に入りそこを走る脳神経を確認し、周囲の血管と神経の関係を観察した後、三叉神経を圧迫している血管を周囲組織から丁寧に剥がし血管が神経に当たらないように、場所を移動させます。この際できるだけ、血管と神経の間に物を挟まない事が重要です。後々神経周囲に瘢痕組織ができ余計に癒着を形成してしまい、再発することがあります。また再手術をする際、癒着が強く剥がす事ができなくなり根治ができなくなってしまう事があるからです。

我々はテフロンという素材を使い細い紐のような物を作り、血管を巻いてテフロンを他の部分に付ける(フィブリンのりという特殊なのりを使ってのり付けしてきます)という方法を行っております。これは私福島がこの30年の手術経験の元で確立した非常に侵襲の少なく、有効かつ安全な手術方法です。

 

福島式手術方法

福島式手術方法


術後

手術による痛みの消失率は 90〜95%。
術直後から痛みが取れることがほとんどです。まれに 1〜2 週間かかることもあります。予定通りであれば入院は術後 1週間で退院できます。

 

手術の危険性・合併症

○全身麻酔によるもの(麻酔薬、挿管等の手技によるもの)
○手術の際の体位によるもの(術後の腕のしびれや動かしにくさ、皮膚のトラブル)
○創部の問題(感染、糖尿病などによる傷の治りが悪く傷がうまくつかない)
○顔面のしびれ感や感覚鈍麻(血管、三叉神経の状況に寄っては、三叉神経の一部を少し切る、または凝固することもある)
○複視(周囲に滑車神経(目を動かす神経)が走行しているため、損傷の危険性がある)
○聴力障害(聴神経(聴力を司っている神経)が走行しており聴力低下喪失を起こす事がある)
○小脳腫脹、梗塞、出血(大きな静脈洞という静脈の近くで手術をするため。または錐体静脈という静脈が三叉神経の近くを走行しており,場合に寄っては静脈が神経を圧迫している場合もある)

いずれも頻度は少ないものの、一定の確率で合併症は認められます。

 

手術の危険性・合併症

三叉神経に感覚が伝わるのを防いで痛みの伝わりを減らそうという方法です。神経に直接局所麻酔薬や神経破壊薬を注射して痛みをとります。局所麻酔薬では麻酔がきれれば痛みが再発します。神経破壊薬では効果は長持ちし、1−2年の間、痛みが楽になります。しかしこの間、顔にしびれたような感覚がのこることになります。神経破壊薬のかわりに高周波の電流で神経を焼く治療があります。これもブロックと同様に痛みは楽になりますが、やはりしびれ感がおこります。神経破壊薬によるブロックと同様、1−2年経ってしびれがよくなってきたころ痛みがまた出てくることが多いです。三叉神経ブロックと混同される治療に星状神経節ブロックがあります。首の下の方の交感神経に局所麻酔を注射する治療です。顔の血液の流れがよくなったりするのですが、特発性三叉神経痛に効果があるという医学的に証明された証拠はありません。

現在まで約2500例の三叉神経痛の手術を行ってきました。この30年の経験と、さらにより安全な治療を目指し顔面神経モニター、脳幹聴性モニターなどの各種モニターを使用し治療を行っております。手術後の痛みの除去効果は非常に素晴らしい物と確信しております。三叉神経痛で苦しんでいらっしゃる患者様にこの治療をご提供でき、痛みから解放される事にぜひお力になりとい思っております。