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頭蓋底腫瘍とは

頭蓋底腫瘍とは、頭蓋内外の最も深部、頭の中心部に発生する腫瘍の総称を言います。脳の深部の中心部には非常に重要な構造が沢山あり、脳幹、脳幹を取り巻く微小な血管、脳幹から出る細い神経、など少しでも損傷してしまうと、命に直結、もしくは非常に重い合併症を残してしまう可能性のある部分なのです。非常に繊細で深く難しい所にできる腫瘍であるので、数十年前は手術不可能な物として扱われて、また手術を行った場合の手術成績は思わしくない物でありました。

しかし1980年代から脳神経外科手術に顕微鏡手術が導入され、また様々な医療機器が開発されたことにより、今まで到達できなかった頭蓋底部まで、周囲の大事な構造を損傷せずに、直接アプローチができるようになりました。さらに様々な研究が行われ、現在まで様々な手術方法、手術技術が構築され、治療不可能と言われていた頭蓋底腫瘍に対して、外科治療が可能かつ有効にものになって行ったのです。さらに最新の放射線治療、化学療法などの技術も進み、手術と放射線治療、化学治療を上手に使うことで脳神経外科の中で最も難しい頭蓋底腫瘍を治す事ができるようになってきているのです。

頭蓋底腫瘍の中には良性腫瘍、中等度悪性腫瘍、悪性腫瘍があります。
「良性腫瘍」には神経鞘腫、髄膜種meningioma、下垂体腺腫pituitary adenoma、類表皮腫epidermoid、脂肪腫lipoma、海綿状血管腫cavernous hemangiomaなどがあります。「中等度悪性腫瘍」には脊索腫chordoma、軟骨肉腫chondrosarcoma、上衣種ependymoma、上衣下細胞腫 subependymoma、膠芽腫astrocytoma, pilocyticastrocytomaなどがあります。
「悪性腫瘍」には悪性膠芽腫glioblastoma、転移性癌metastatic carcinoma、鼻咽頭癌、肉腫sarcoma、嗅神経芽細胞腫olfactory neuroblastoma、髄芽細胞腫 medulloblastomaなどがあります。

この中でも、各種神経鞘腫(聴神経鞘腫、顔面神経鞘腫、三叉神経鞘種、頚静脈孔神経鞘腫)、下垂体腺腫、類表皮腫、脂肪腫、脊索腫、軟骨肉腫、上衣種、上衣下細胞腫、膠芽腫の一部は外科的治療が有効です。これらの治療法、手術方法は福島孝徳が30年の脳外科手術経験と研究の中で培ってきた技術、知識から最善の治療方法、手術方法を選択し患者様に最高の手術を提供しております。

「良性腫瘍」とは、腫瘍の成長がゆっくりな腫瘍を指します。たとえば皮膚にできたイボのようなものを想像してください。それ自体は特に命を奪う程急な成長をしたり、周りに浸潤したり、転移したりする物ではなく、悪いものではありません。しかし頭蓋内にできてしまった物に関しては少し意味合いが変わってきてしまいます。頭蓋内は限られた空間に仕切られています。また周囲には脳や神経といった重要な構造があり、その構造を圧迫することで、腫瘍の存在自体が頭痛、めまい、ふらつき、顔の麻痺、痛み、声がかすれる、手足が動かしにくい、目が見えにくいところがあるなどの神経症状を引き起こす物になってしまいます。故に良性腫瘍と言っても悪い影響が出ないようにしなくてはなりませんので、腫瘍を摘出する必要が出てきます。

しかし、成長が遅くゆっくりとした変化の為に症状が出にくい性質から、発見された時には腫瘍が大きく成長してしまっている事がしばしば見受けられます。近年の画像診断の発達と脳ドックなので普及によって腫瘍が小さい段階で発見される事も多くなってきました。良性腫瘍はできるだけ腫瘍を摘出してあげる事で再発しにくくなり、全摘出をすれば完治も可能であるという性質のものです。

また手術によって腫瘍の組織を調べる事ができるので、腫瘍がどのような性質の物か、他に追加の治療が必要な物かなどの腫瘍の情報を得るという意味も、手術をする非常に重要な目的に一つでもあります。
この頭蓋底腫瘍という分野に置いて、我々の手術方針は小さいものであっても腫瘍がある場合、そして手術によって摘出可能な物に関しては、できるだけ手術での治療をお勧めしております。腫瘍が大きくなってしまいますと、腫瘍は周囲の大事な構造に癒着する危険性が増え、また放射線治療が施されてしまうと、放射線の影響で更に癒着が強くなり、全摘出が困難になってしまうからです。

「悪性腫瘍」は腫瘍の成長が早くまた周囲組織に浸潤する性質があります。腫瘍伸展が早いため早期に症状が出やすいので、症状が出てから発見される事が多いですが、同時に腫瘍が浸潤してしまっているが為に、症状が出てしまっているという事は症状を起こしている部分には既に腫瘍細胞が存在してしまっている可能性が高いということを示唆しています。しかも頭蓋底という部分は非常に狭く小さな臓器であるにも関わらず、非常に大事な機能を有しているところであるため、その腫瘍を摘出する事はその大事な機能を有した部分を摘出することになります。すなわち大事な機能を失ってしまう可能性があるのです。

また腫瘍細胞の浸潤は肉眼では確認できない程小さい細胞単位で浸潤しています。理論的に完全に全摘出することができません。これらは手術治療に向かない腫瘍であるため、化学療法、放射線治療など集学的治療を行える病院での治療をご紹介しております。

「中等度悪性腫瘍」は良性腫瘍と悪性腫瘍の中間の性質を持っており、多くの場合手術治療が可能ですが、腫瘍の種類に寄って性質が異なりますので、その状況に応じて治療戦略を立てる必要があります。

頭蓋底腫瘍に対しての手術方法は福島孝徳自身が30年間で築き上げた様々な手術アプローチ法を使用して行います。前頭蓋底到達法Anteiro skullbase approach, 経海綿静脈洞到達法Transcavernous approach, 前、中、後中頭蓋窩到達法Anteiro, Middle, Posterior Middle Fossa approach, 経後静脈洞後頭蓋窩到達法Retrosigmoid approach,経乳様突起前静脈洞後頭蓋窩到達法Transmastoid Presigmoid approach, 経静脈洞到達法Transsigmoid approach, Extream Lateral Infrajugular Transcondylar Transtubercular Exposure (ELITE) approach, Combinedpetrosal approachなど様々な手術法でより確実で、安全な手術方法を選択して最良の結果を出すように心がけております。

また手術の際には最新の医療機器、ナビゲーションシステム、超音波機械、福島式頭蓋底腫瘍専用の医療器具の数々、また腫瘍の性質によってはサイバーナイフの追加治療など様々な方法で腫瘍と戦い治療を行います。またもう一つ重要な事はチーム医療です。特に頭蓋底腫瘍の手術は非常に危険を伴う手術になります。手術後の回復に通常より時間がかかる事もありますし、リハビリテーションを必要になる場合もあります。手術とともに術後ケアを大事に考えておりますので、全国の福島頭蓋底腫瘍手術チームで各地の病院で手術と術後のケアを行い、患者様が安心して治療を受けられるような体制を取っております。
現在まで15,000例を超える頭蓋底腫瘍の手術を行ってきました。この経験を元に更なるより良い手術を求め、最高の手術を提供しております。

15,000例の頭蓋底腫瘍手術の認定書